2025.07.07NEW
みなさま、こんにちは。
つくば住宅工房の橋本です。新しく建てるのではなく、今ある家を、これからの暮らしに合わせて整えていく。
そんなリフォーム・リノベーションの道も、いいもんです。建築家と一緒に、わたしたちができることを考えながら、このブログに日々のことを綴っています。
普遍性とは、そのものを構成する最低要素——つまり、それがそれであるために削ぎ落とせない本質。
どんなに時代が移ろっても変わらずに残るものは、流行や装飾ではなく、“根源的なかたち”に支えられています。
そのかたちは、人の身体に自然に馴染む寸法であり、文化や記憶に寄り添う存在であり、生活に必要な機能と感性がひとつになった構造でもあります。
暮らしの中でふと触れる湯のみ茶碗の丸み、障子越しのやわらかな光、畳に腰を下ろしたときの空気のたゆたい。
どれも日常にありふれていながら、形を変えずに私たちの感覚に寄り添い続けてくれるものです。
それらは流行とも革新とも違います。
変わらないということは、時代を超えて選ばれ続けてきた証でもあります。
そしてその選択は、手触りや香り、空気の厚みといった、言葉になりづらい感覚をもとにした“静かな評価”なのではないでしょうか。
建築もまた、そうした変わらないもののひとつだと言えます。
寸法の決まり、素材の組み合わせ、光の取り入れ方——人の身体性や精神性に根ざした形には、いつの時代でも変わらない「快さ」が宿っているように思います。
本日は、昨日のブログで触れた「普遍」にフォーカスして、その言葉が持つ意味とその豊かさ触れながら、変わらないものがもたらす安心と美しさについて考えていきます。
なぜ“変わらないもの”が存在するのか
人の身体に馴染む形、精神性の器としての空間、機能と美が融合した設計。
こうした要素が揃っているものは、時代が進んでも変わりません。
むしろ、変わる必要がなかったからこそ、今も私たちのそばに静かに残り続けているのではないでしょうか。
それは革新に取り残されたのではなく、革新の果てに見出された“最適解”とも言えるかもしれません。
変わらないものがもたらす安心感
変わらないものは、空間に予測可能性と精神的安定をもたらしてくれます。
記憶と感情をつなぐ橋渡しとなり、日々の暮らしの中で繰り返される小さな儀式のような役割も担ってくれるものです。
目にする、触れる、身につける——そのたびに「今日も変わらず、そこにある」という感覚に包まれます。
それは、一貫性の中で育まれる安心であり、人が“自分自身でいられる”ための静かな支えになってくれるのです。
建築における“変わらない”の重要性
建築において変わらない要素は、感性と構造が交差する場所に存在しています。
吉村順三が語った「建築は詩」という言葉の通り、美しさは理論や流行の先にあるものだと感じます。
身体性に根ざした寸法、気候風土に合った素材、精神性を宿す空間。
これらは文化として継承され、空間が時間を超えて“安心の場”となるように設計されてきたものです。
変わらないこと=最大のコストパフォーマンス
私たちが日々求めているのは、迷わないこと、揺らがないこと、そして心が安定する環境かもしれません。
変わらないものは、そのような感覚の土台となってくれる存在です。
何度も使えて、何度でも心に響き、しかも古びない。
流行は追えば消耗し、革新はやがて新たな革新に置き換えられていきます。
それでも最初から“変わらない”ものを選ぶことは、繰り返し買い替える必要がなく、一生を通しての満足度——つまり最大のコストパフォーマンスにつながる選択なのではないでしょうか。
それは経済効率を超えて、感性と時間を味方にした暮らしの知恵なのだと思います。
普遍性を暮らしに、建築家の手で
日々の暮らしの中に、普遍性を丁寧に取り入れていくこと。
それこそが、私たちが考える何よりの幸福のかたちです。
心が揺れない「居場所」をつくること——それは流行や奇抜さを超えた、深い価値のある空間なのだと思います。
けれども今の時代は、普遍性よりもトレンドが重視されているように感じられます。
顧客のご要望を叶えるという点において、それが誤りだとは思いません。
ですが、普遍性という言葉が「普通」「一般的」「個性がない」といった捉え方をされてしまう場面には、少し寂しさを覚えます。
私たちは、普遍性と顧客の要望とを融合させることこそが、理想的な住まいづくりだと考えています。
どちらか一方に偏るのではなく、過去から現在まで受け継がれてきた建築の知恵に精通した建築家が、施主の人生と価値観にそっと寄り添いながら空間をかたちにする——それが本当の豊かさではないでしょうか。
その難題に応えてくれる存在こそ、やはり建築に精通した建築家だと、私たちは信じています。
つくば住宅工房では、そんな思想を大切にしながら、すべての住宅を建築家による設計とすることを基本にしています。