2025.08.04
みなさま、こんにちは。
つくば市で戸建住宅のリノベーションをご提案しております、つくば住宅工房の橋本です。
新しく建てるのではなく、今ある家を、これからの暮らしに合わせて整えていく。
そんなリフォーム・リノベーションの道も、いいもんです。
建築家と一緒に、わたしたちができることを考えながら、このブログに日々のことを綴っています。
リノベーションという言葉は、しばしば「古いものを新しくする」行為として語られます。けれど本質は、過去と未来をつなぐ設計行為にあります。
建築家の思考には、空間を単なる箱ではなく、“人のふるまい”や“時間の重なり”として捉える視点があります。この視点こそが、画一的な提案では満たされない「暮らしの質」への欲求に応える鍵になるのです。
建築家・塚本由晴氏は、空間を「非施設型」として捉える思想を提唱しています。これは、空間が人の動きを規定するのではなく、人のふるまいが空間を形づくるという考え方です。
例えば、縁側でお茶を飲む、廊下で子どもが走る、台所で家族が集まる——そうした“ふるまい”が空間の意味をつくり出します。
リノベーションは、こうした記憶や行動を読み解き、空間に再構築する行為です。築年数の経った家には、時間の重なりがあります。その痕跡を丁寧に拾い上げることで、空間は“生きた場”へと変わっていくのです。
設計に入る前のヒアリングは、単なる要望の確認ではなく、暮らしの本質を探る対話です。私はヒアリングの中で、次のような問いを大切にしています。
こうした問いは、暮らしの記憶や価値観を引き出します。「なぜ?」を繰り返すことで、表面的な希望の奥にある本質的な願望が見えてくるのです。
たとえば「キッチンを広くしたい」という要望の裏には、「家族と一緒に料理を楽しみたい」「家電の置き場に困っている」「動線が悪くてストレスを感じている」といった、暮らしの質に関わる課題が隠れています。それを丁寧に言語化することで、設計は思想を伴ったものになります。
私が活動する茨城県——つくば、牛久、取手などの地域には、都市の利便性と自然の余白が共存しています。この“余白”こそが、思想的なリノベーションに向いていると感じています。
リノベーションは、単なる改修ではなく、地域と人の記憶をつなぐ行為でもあります。茨城の家々には、そうした可能性が眠っているのです。
設備や広さだけでは語れない空間の価値があります。建築家の思考を取り入れることで、空間は“生きた場”となり、そこに住む人の暮らしを豊かにします。
リノベーションは、過去を否定するのではなく、未来を肯定するための再設計。そのプロセスにこそ、住まいづくりの本当の価値があるのではないでしょうか。