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なぜ風が抜けない? なぜ部屋が暗い?

2025.11.18

毎日の暮らしの中で、「ちゃんと窓はあるのに風が通らない」「昼間なのに照明をつけたくなるほど暗い」——そんな小さな違和感を抱えている方は少なくありません。つくば周辺でも、“家の居心地”を見直すきっかけとしてよく聞かれる悩みのひとつです。
ところが、この問題は設備の老朽化や性能不足よりも、家そのものの“設計の組み立て方”に理由があることがほとんど。風の入口と出口のバランス、窓の配置、高さ、隣家の影の落ち方……。暮らしや敷地の条件によって、光と風の通り道は大きく変わってしまいます。

通風や採光は、目に見えないけれど、住まいの快適さを決める核心部分。だからこそ、表面的な補修ではなく、暮らし方まで含めて丁寧に見直すリフォームが力を発揮します。
この記事では、「なぜ今の家がこうなっているのか」「どこを整えると暮らしが変わるのか」を、やさしくわかりやすく紐解いていきます。光と風がめぐる家へ——その第一歩を一緒に見つけていきましょう。

なぜ風が通らない? なぜ部屋が暗い?

風が抜けない理由は「家の配置」と「窓の役割」が噛み合っていないから

窓を開けても空気が動かず、もわっとした空気だけが残る——そんな感覚を覚えたことはありませんか。実はここには、ちょっと意外な“仕組み”が隠れています。性能が足りないとか、古いから…という単純な話ではなく、家の形や配置、そして窓そのものの性格が微妙にずれてしまっていることが多いんです。

心地よく風が抜けない家は、ほとんどの場合「風の入口と出口の流れがつくられていない」ことが根本にあります。
最初に入口と出口が正しく設定されていないと、どれだけ窓を開けても空気は思うように動きません。さらに、窓の高さや方向が合っていないと風は途中で失速し、ただ“開いているだけの窓”になってしまうこともあります。そして最後に、近隣の建物や庭木の配置が風の流れをさえぎってしまうケースも見逃せません。

たとえば、つくばの住宅街で多い南北に細長い敷地では、南側に大きな掃き出し窓をつくっていても、北側の窓が腰高で開口が小さいと、空気はうまく抜けてくれません。風は高いところから低いところへ、そして圧力の高い場所から低い場所へ流れる性質があるので、北側にも高さや開き方を工夫した窓があるだけで風の通り道は大きく変わります。
また、角地ではない敷地ほど周囲の建物が近く、横から吹き込む風が建物の壁で乱されるため、想定していた風がうまく入らないことも。設計時に「どの季節にどの方向から風が来るか」を正しく読み解くことで、こうしたズレをなくしていけます。


部屋が暗く感じるのは「光の入り口が少ない」わけではなく“光の回り方”が整っていないから

「窓の数は足りているはずなのに、どうしてこんなに暗いんだろう…?」
そう感じる家ほど、光の“量”ではなく“質”が損なわれています。十分に窓があるのに暗い——この矛盾の正体は、光が部屋の奥まで届くための“段取り”にあります。

明るさを決めるのは、単純な窓の数ではなく「どの高さから光が入り、どこで反射し、どんな角度で部屋の奥へ届くか」という光の道筋です。窓が南向きであっても、低い位置にしかなかったり、隣家の影が落ちていたりすると、光は足りているように見えて実は奥まで届いていません。さらに、内装の色や間仕切りの配置が光の反射を妨げてしまうと、体感の明るさは驚くほど変わります。
実際につくばで相談を受けたお宅では、南側に大きな掃き出し窓がずらりと並んでいたにもかかわらずリビングが驚くほど暗い状態でした。調べてみると、北側のキッチンとの境にある壁が光を吸収してしまい、光がLDK全体に広がらない構造になっていたんです。そこで、キッチン側の上部だけ開口を設けて“光の抜け道”をつくると、部屋の奥までやわらかい光が届くようになり、照明の使用時間まで短くなりました。

通風・採光リフォームは「部分補修」ではなく“設計の再構築”

窓を“直す”のではなく、家全体のバランスを整えるところから始まる

「とりあえず窓を大きくすれば明るくなるかな」「北側にも窓を足せば風が抜けるよね?」——こうした考え方はとても自然ですが、建築家は少し違う視点からスタートします。光と風は“家の中をどう旅するか”で決まるため、部分的な変更だけでは本質的な改善につながりにくいんです。

通風・採光リフォームは、窓そのものをいじる前に「その窓がどの役割を持つべきか」を設計し直すところから始まります。家全体の風と光の流れをマップのように整理し、入口・出口・反射ポイントを整えることで、初めて効果が最大化されます。
たとえば、つくばであったケースでは、暗さに悩むLDKに「天窓をつけたい」という相談がありました。でも計画を見直すと、問題は天井側ではなく、リビングの奥が“光を受け止める面”になっていないことが原因でした。そこで、壁の一部を白系の塗装に変更し、隣接する和室との間仕切りを半透明の引き戸に変えたところ、天窓をつけずとも部屋全体の光量が大きく改善。結果的に工事費は抑えながら、光の広がりは想定以上に整いました。
こうした「家全体のバランスを読み解く」アプローチこそ、建築家がリフォームで大切にしている視点です。


風と光を導く“高さ・角度・抜け道”を読み解くのが設計力の本質

通風や採光は、見えるようで見えない“立体的な計画”で決まります。
窓のサイズや向き以上に、「高さ」や「抜け道」が整っているかどうかが、家の心地よさを左右します。ここを理解すると、リフォームの価値が一気にクリアになります。

建築家が特に重視するのが、風と光が家の中をどう立体的に巡るかという視点です。風の流れは高さの差で生まれ、光は反射の角度で広がるため、水平の計画だけでは読みきれません。
つくばのあるお宅では、南側に大きな窓があるのに夏の熱気がこもる状態でした。その理由は、南側の窓が低い位置に集中し、北側の高い窓が閉じ切っていたため、室内の熱が逃げ道を失っていたからでした。そこで北側の窓を上げ、開閉しやすい縦滑り窓に変更したところ、上下の温度差を利用した“煙突効果”が生まれ、夏の室温が平均1.5〜2℃ほど低下。エアコンの使用時間も目に見えて減りました。
このように、窓の“高さの設定”や“抜け道の確保”は、数値以上に体感を大きく変えるポイントなんです。

暗かったLDKが一変した。

最初の一歩は“暮らしの声”を丁寧に拾い上げるところから

家の暗さや風通しの悪さって、図面を見るだけでは気づけないことが多いんです。
実際にそこに住む人が「どの時間帯に」「どの場所で」「どんな気持ちになるのか」——その“体験の質”こそが、本当の課題を教えてくれることがあるんですよね。

つくばで相談されたお宅でも、出発点はご夫婦のちょっとした一言でした。
「夕方になると、リビングが急に重たく感じるんです」。
リフォーム前の図面を見る限り、南側には大きな掃き出し窓があり、一見すると明るさは足りているように見えました。でも、実際の暮らしを聞いていくと、家族が過ごす中心であるソファ周りにだけ影が落ちてしまい、体感として“暗さ”を覚えていたんです。

現地で確認すると、原因はリビングの奥にあるTVボードとその背面の濃い色の壁材。光が入り込んでも、奥で吸収されてしまうため、部屋全体がくすんだ印象に。
そこで、建築家は「明るさを広げるための反射面をつくる」というアプローチを提案。TVボード背面を少しだけ後退させ、白系の凹凸の少ない塗装に変更。さらにソファ横の袖壁を一部くり抜き、隣の和室からの光をやさしく引き込む“光の取り次ぎ”をつくりました。

完成後、ご夫婦からあった言葉がとても印象的で……
「窓を変えていないのに、こんなに違うんですね」。
その驚きが、まさに“設計の力”なんです。


風の抜け方を整えると、暮らしの“温度”が変わる

光が整うと家の印象は一気に変わりますが、風の通りが整うと“体感の快適さ”まで変わっていきます。
とくに夏場のつくばは湿度が高く、風が抜けるかどうかで住み心地が大きく変わる地域。ここを改善できると生活そのものが軽くなります。

同じお宅で、もうひとつ大きな課題になっていたのが風の抜け道でした。窓を開けても空気が動かず、夏場はエアコン任せ。原因は、南側の大窓に対して北側の窓が“閉じた位置”にあり、室内に高低差による気流がまったく生まれていなかったことでした。

建築家はまず、北側の腰窓を縦滑り窓へ変更し、開口位置を約40cm上げました。
この小さな変更が、家の中に“高さの差”をつくり、煙突効果を生むきっかけに。
さらに、キッチン横の収納棚を一部スリット状に変更し、風がリビングまで抜けやすいルートをつくったことで、空気の動きが格段に変わったんです。

リフォーム後、体感温度は平均で1〜1.5℃ほど低下。
「午後のキッチンに立つのが楽になりました」
と奥様が話されていたのが、とても嬉しい瞬間でした。

こうした変化は、派手な工事じゃなくても生まれます。
暮らし方と家の“形”を丁寧に読み解くことで、光と風がちゃんと居場所を見つけてくれるんです。

あなたの家はどう改善できる?

まずは“今の家がどう光を受け止めているか”をやさしく見てみる

リフォームを考えるとき、いきなり専門的な図面を広げる必要はありません。
まずは、自分の家のどこに光が入り、どこで止まってしまっているのかを、ほんの少し意識するだけで“改善できる余白”が見えてくるんです。

光の伸びしろを知る一番やさしい方法は、「朝・昼・夕方で部屋の明るさの変化を見てみる」ことです。じつは光は“時間によって届く位置が変わる”ので、どの時間帯に暗さを感じるかで原因がつかめます。
たとえば、つくばのお宅でも、昼間は明るいのに夕方だけリビングが急にくすむという例がありました。これは西側に隣家の影が落ちる時間帯で、光が手前で止まってしまっていたから。そこで照明を増やすのではなく、光を奥に送り込むための反射面を整えるだけで印象が大きく変わりました。

また、「光の抜け道」を探すのもポイントです。
隣の部屋の明るさを引き込めるか、壁の一部をくり抜くとどう光が動くか……こうした小さな工夫が、窓を増やさずに明るさを整える鍵になります。
暮らしの中で感じる“ちょっと暗いな”の正体は、案外こうした“光のルートの行き止まり”にあるんです。


風通しは「入口・出口・高さの差」——この3つを意識するだけで見える

風通しを良くするのは、大掛かりな工事だけではありません。
「どこが入口で、どこが出口か」「高さに差があるか」の3つだけ意識して家を見てみると、風が動くためのヒントが驚くほど見つかるんです。

まず入口ですが、風は“広い面積よりも位置”が大事です。南側の大窓が入口なら、反対側に小さくてもいいので出口があると風は動きやすくなります。
つくばでよくあるのが、南側に大きな掃き出し窓があるのに北側の窓が閉じ気味で、風が家の中で滞留するケース。北側の窓を少し上げたり、開けやすい形に変えるだけで動き方が一気に変わります。

次に出口。出口側は“風が逃げやすい高さ”だと効果が出やすくなります。縦滑り窓や高窓は、風が抜ける際の抵抗が少ないので、出口として優秀なんです。

そして最後に高さの差。この“上下の温度差による気流”は想像以上に強力で、夏の暑さにもよく効きます。
実際につくばのお宅では、北側の高窓を使って室内の熱気を逃す仕組みをつくっただけで、体感温度が1〜2℃ほど変わりました。

こうしたチェックポイントを軽く押さえておくだけでも、
「あ、うちの家ここを整えたら変わりそうだな」
という感覚がつかめるはずです。

まとめ

光と風が整うと、暮らしは静かに、でも確かに変わっていく

家づくりの相談をしていると、よく「設備を変えれば明るくなる?」「窓を増やせば風が通る?」という声を聞きます。でも実際には、光と風は“どんなルートで家の中を旅するか”が整っているかどうかで決まります。今回お伝えしてきたように、窓の位置や高さ、部屋の配置、隣家との関係、さらには反射面の扱い方——こうした設計の積み重ねが、暮らしの心地よさを支えているんです。

そして一番大切なのは、家の悩みは「大掛かりな工事をしないと解決しないわけではない」ということ。
光の抜け道をつくったり、風の出口を整えたり、ちょっとした改善でも毎日の温度や明るさは驚くほど変わります。暮らしが軽くなるって、こういう積み重ねのことなんですよね。

もし今、「暗い」「重たい」「風が動かない」という小さな違和感があるなら、それは“もっと心地よくできる余白”があるサインかもしれません。
図面よりも大切なのは、そこで暮らすあなたの感覚。その声に耳をすませながら、光と風の動きを読み解いていくと、家はちゃんと応えてくれます。

つくばで家の通風や採光に悩んでいる方なら、一度専門家に「光と風の通り道」を見てもらうだけでも、驚くほど視界がひらけます。
資料請求でも、オンライン相談でも、気軽に入り口を覗いてみてください。今の暮らしを、ちょっとだけ優しく整えるきっかけになるはずです。

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