
家づくりのテーマに、必ずと言っていいほど登場する「収納」。
広さはどれくらい必要か。
ウォークインクローゼットはいるか。
パントリーはどのくらい確保するか。
図面の中では“面積”として語られることが多い収納ですが、本当に大切なのは広さよりも、その考え方かもしれません。
収納を考えるとき、いつも意識していることがあります。
それは「仕舞う」と「片づける」は違う、ということ。
仕舞うとは、頻繁には使わないけれど、必要なときのために保管しておくこと。
片づけるとは、日常的に使うものを、使い終わったあと元の場所へ戻すこと。
似ているようで、まったく違う役割です。
毎日使うバッグや上着が、奥の棚に“仕舞い込まれて”いたらどうなるでしょうか。
少し面倒になり、ついその辺に置いてしまう。
その小さな積み重ねが、「片づかない家」をつくってしまいます。

収納計画で大切にしているのは、徹底したヒアリングです。
いま、どれくらいの洋服があるのか。
押入れ何個分なのか。
タンスはいくつあるのか。
量を正確に知ること。
そして、どんなふうにしまいたいのか。
見せたいのか、隠したいのか。
ワンアクションで戻せる形がいいのか。
さらに、それは「仕舞う物」なのか、
それとも「片づける物」なのか。
一緒に整理していく時間は、単なる収納計画ではなく、暮らし方を見つめ直す時間でもあります。
人は1日に10〜20分ほど、探し物をしていると言われています。
仮に15分だとすると、1年間で約90時間。
約11日分の労働時間に相当します。
「どこに置いたかな」と探す時間。
「あれがない」と焦る時間。
小さなストレスの積み重ね。
もしその時間が減ったなら、暮らしはほんの少し、やわらかくなるはずです。
住宅性能というと、断熱性能や耐震性能がよく語られます。
もちろんどちらも大切です。
けれど、もうひとつ。
収納性能は、「時間を生む性能」だと考えています。
収納が整う
↓
探す時間が減る
↓
心の余白が生まれる
↓
衝動的な買い物が減る
↓
暮らしが整いやすくなる
直接的な証明があるわけではありません。
それでも、日々の暮らしの中では確かに実感できる流れです。
動線に沿った収納がある家は、朝の支度が少し早くなり、帰宅後のリセットが少し楽になり、掃除のハードルも少し下がります。
その“少し”の積み重ねが、家族と過ごす時間や、好きなことに向き合う時間を生み出していく。
収納は、モノをしまうための箱ではなく、暮らしの流れを整える設計。
仕舞う物と、片づける物を分けて考えること。
それだけで、住まいは驚くほど使いやすくなります。
家づくりにおける収納計画は、未来の時間をつくる設計でもあるのです。

つくば住宅工房株式会社 代表 / 住宅プロデューサー
二級建築士、石綿作業主任者、石綿含有調査者
既存住宅状況調査技術者
福島県出身。幼少期から家づくりに関心を抱き、「劇的ビフォーアフター」などの番組に背中を押されて建築への道を志す。高校では建築科に進学し、設計製図や構造の基礎を学びながら、「建築家としての感性」を育んできた。
新卒時には現場監督として住宅建築に携わり、職人との協働を通じて現場力・統率力を身につける。その後ログハウスメーカーで構造、施工、設計、営業と多岐にわたる経験を積む。営業時代には「お客様との対話」によって、商品や仕様のこだわりが伝わることの大切さを痛感。やがて起業を決意し、つくば住宅工房を設立。
家づくりにおいて何よりも重視するのは、「言葉にならない想い」をすくい取り、家という形に昇華させること。リフォーム・リノベーション・新築を問わず、常に「住み続けるほど好きになる家づくり」をミッションに掲げ、クオリティと誠実性を第一に提案を行っている。
「家は人生をゆたかに包み込む舞台である」という信念を胸に、家そのものを育て、住む人の想いを反映する住まいを共につくっていきたいと願っています。ブログでは、住宅の技術的知識から心の動きを捉える対話まで、幅広くお伝えしていきます。」