新しいキッチン。明るいリビング。きちんと片付く収納。新しい家に住んだら、今より幸せになれるかもしれない。そう思うのは、無理のないことです。
私も住宅の仕事をしてきて、新築には新築の良さがあると思っています。ただ、一つだけ考えてみたいことがあります。
家が新しくなったら、暮らしも自動的に良くなるのでしょうか。
広いLDKをつくったからといって、家族がそこで過ごす時間が増えるとは限りません。収納を増やしたからといって、物が散らからなくなるとは限らない。書斎をつくったのに、結局ダイニングで仕事をしているかもしれない。
新しい家をつくることと、幸せな暮らしをつくることは、同じ作業ではないのだと思います。家は暮らしを支える器です。器を新しくすることと一緒に、その中で何をしたいのかまで考えておきたいのです。
帰ってきて、どこに荷物を置くのか。朝、家族はどこですれ違うのか。夜はどこに集まるのか。家は図面の中では暮らせません。毎日の小さな動きの積み重ねです。ここを飛ばすと、きれいな家ができても、何かが合わないことがあります。
「新しい家が欲しい」と思ったときこそ、一度だけ立ち止まってみてください。新築か、リノベーションか、まだ何も決まっていなくて大丈夫です。暮らしの話から聞かせてください。