リノベーションを考えるとき、「古いものは全部新しくしたほうがいいのか」と迷う方がいます。

私は、全部を取り替えなくていいと考えています。

家の価値は、価格や機能だけで決まるものではありません。その空間が持っている記憶や、素材の質感にも価値があります。リノベーションは、それを見極めて、今の暮らしに合うようにつなぎ直す仕事だと思っています。

たとえば、長年使われてきた木材の温かみ。時を経て風合いを増した石材。新しい素材に置き換えてしまえば、そこで途切れます。残して活かせば、その家が持っていた物語が続いていきます。

そして、工事が終わったときが完成ではありません。無垢材(一枚の木から切り出した板)の床は、年月とともに変化を楽しめます。職人さんの手仕事が感じられる漆喰の壁も、時間とともに味わいが増していきます。住む人が毎日を重ねるうちに、愛着が深まっていく。そういう家になります。

この空間は、住む人にとってどんな意味を持つのか。建築家はそこを問い続けながら、形にしていきます。

残したい柱や建具があれば、教えてください。何を残して何を変えるか、一緒に考えます。