「“うちは大丈夫”に潜む盲信」

「“うちは大丈夫”に潜む盲信」

投稿日:2025年7月5日 / 最終更新日:2025年7月5日

みなさま、こんにちは。
つくば住宅工房の橋本です。新しく建てるのではなく、今ある家を、これからの暮らしに合わせて整えていく。
そんなリフォーム・リノベーションの道も、いいもんです。建築家と一緒に、わたしたちができることを考えながら、このブログに日々のことを綴っています。


〜震災の記憶から問い直す、暮らしと建築〜

2011年、私は福島県郡山市の実家で、東日本大震災を体験しました。
その揺れは、過去に感じたどんな地震とも違いました。
一瞬で、「これは今までと違う」と本能的に悟り、家の中の空気が一変したのを今でも忘れることができません。

それから熊本地震、そして令和6年の能登半島地震。
日本列島を繰り返し襲う大地震。私たちはその度に映像を見て、胸を痛めます。
けれども、なぜか「自分の家はきっと大丈夫」という想いが根強く残っている。
私は、そこにこそ最も危うい“盲信”が潜んでいるように感じています。

新耐震基準で建てられているから安心。耐震等級3だから問題ない。
でも、それらは“今の状態”を保証するものではありません。
先日紹介したevoltsの記事でも触れたように、建物は小さな地震の積み重ねだけでも、躯体に確実な疲労を残します。
設計時の耐震性能は、時とともに確実に変化する——それが建築の現実です。

南海トラフ地震の発生確率は、30年以内に80%。でもそれは30年後ではないかもしれない。
それは、明日かもしれない。今夜かもしれない。
だからこそ私は思うのです。目を背けてはいけない。
「幸せな暮らしを守りたい」と願うならば、まずは自分の家の“今”を知ることから始めなければならないと。

それが、住宅インスペクションです。
専門家による現状診断を受けることで、見えない劣化や構造的な課題が明らかになります。
診断を受けたからといって不安になる必要はありません。むしろ、それは“備えるという選択肢”を手にすることになるのです。

攻撃的な語りだと受け取られるかもしれません。けれども私は、あえてこの語り方を選びました。
それは、守りたい人がいるから。
それは、過去の記憶を未来に繋ぎたいから。

どうか、この文章が誰かの意識を変えるきっかけになればと思います。
地震は避けられない。でも、被害は減らすことができる。
そのために必要なのは、“知ること”。そして、“行動すること”です。

著者プロフィール 
橋本 海知(はしもと かいち)

つくば住宅工房株式会社 代表 / 住宅プロデューサー

国家資格

二級建築士、石綿作業主任者、石綿含有調査者

技術資格

既存住宅状況調査技術者

福島県出身。幼少期から家づくりに関心を抱き、「劇的ビフォーアフター」などの番組に背中を押されて建築への道を志す。高校では建築科に進学し、設計製図や構造の基礎を学びながら、「建築家としての感性」を育んできた。

新卒時には現場監督として住宅建築に携わり、職人との協働を通じて現場力・統率力を身につける。その後ログハウスメーカーで構造、施工、設計、営業と多岐にわたる経験を積む。営業時代には「お客様との対話」によって、商品や仕様のこだわりが伝わることの大切さを痛感。やがて起業を決意し、つくば住宅工房を設立。

家づくりにおいて何よりも重視するのは、「言葉にならない想い」をすくい取り、家という形に昇華させること。リフォーム・リノベーション・新築を問わず、常に「住み続けるほど好きになる家づくり」をミッションに掲げ、クオリティと誠実性を第一に提案を行っている。

  • 専門領域・関心分野
  • リノベーション/リフォーム
  • インスペクション
  • 耐震診断、温熱計算
  • 中古住宅の価値再生
  • 高性能住宅設計
  • 補助金制度活用・コスト最適化
  • 顧客との対話を重視した設計提案

メッセージ

「家は人生をゆたかに包み込む舞台である」という信念を胸に、家そのものを育て、住む人の想いを反映する住まいを共につくっていきたいと願っています。ブログでは、住宅の技術的知識から心の動きを捉える対話まで、幅広くお伝えしていきます。」

橋本 海知(はしもと かいち)

こんな記事も読まれています