限られた予算でも、豊かなリノベーションを叶えるために

限られた予算でも、豊かなリノベーションを叶えるために

投稿日:2025年7月2日 / 最終更新日:2025年7月2日

みなさま、こんにちは。
つくば住宅工房の橋本です。新しく建てるのではなく、今ある家を、これからの暮らしに合わせて整えていく。
そんなリフォーム・リノベーションの道も、いいもんです。建築家と一緒に、わたしたちができることを考えながら、このブログに日々のことを綴っています。


 

—新築にはない、選び取る力と美学—

リノベーションを考えるとき、もっとも大きな課題の一つが「限られた予算の中で、どこにどれだけ投資するか」という選択です。新築のようにゼロから積み上げるのではなく、既存の建物が持つ記憶や制約と向き合いながら、再構築していく。そのプロセスこそが、リノベーションの面白さであり、難しさでもあります。

ここでは、予算を最大限に活かすための考え方と工夫をご紹介します。

 

1. 「譲れない価値」を先に決める

まず初めに考えたいのは、「ここだけは大切にしたい」という軸です。たとえば、「祖父母の家の梁は残したい」「断熱性能を上げて一年中快適にしたい」など、感情的・機能的な優先順位を明確にしておくことで、判断がぶれず、納得感のある選択ができます。

 

2. 「残す・変える・活かす」で仕分ける

空間を以下の3つに分けて考えると、ぐっと整理しやすくなります。

残す:構造体、梁、床材など コスト削減に貢献
変える:水回り、断熱、間取りなど 優先度に応じて調整
活かす:古建具、既存間取りの工夫 デザイン性向上+節約

リノベーションは「壊して作る」ではなく、「編集して磨く」という発想がカギになります。

 

3. 「見えない部分」にこそ投資する

耐震補強、断熱材、配管の更新など、後からでは手を入れにくい部分は、優先的に予算をかけるべき領域です。一方で、内装や設備は将来的にアップデート可能なため、一時的にグレードを抑える判断も賢い選択と言えます。

 

4. 既製品+造作でコストと個性の両立を

たとえば、既製のシステムキッチンに造作の収納棚を組み合わせるなど、既製品のコストメリットと造作の個性を両立させる方法も効果的です。

 

5. 「引き算の美学」を意識する

すべてを詰め込むのではなく、余白や素材感、光と影の移ろいなどを大切にした「引き算」の設計。これはコストを抑えつつ、深みと詩的な空気感を醸し出す工夫でもあります。

 

6. 段階的リノベーションという選択

すべてを一度に行うのが難しい場合は、まずは構造・断熱・水回りなど重要度の高い部分から着手し、内装や家具は後から整える「段階的リノベ」も有効です。

 

終わりに

リノベーションは単なる住宅改修ではなく、「今あるもの」と「これからの暮らし」との対話です。限られた予算の中で、どこに物語を宿し、どこに未来を託すか。その問いに向き合うことこそが、本質的な豊かさにつながっていくのではないでしょうか。

著者プロフィール 
橋本 海知(はしもと かいち)

つくば住宅工房株式会社 代表 / 住宅プロデューサー

国家資格

二級建築士、石綿作業主任者、石綿含有調査者

技術資格

既存住宅状況調査技術者

福島県出身。幼少期から家づくりに関心を抱き、「劇的ビフォーアフター」などの番組に背中を押されて建築への道を志す。高校では建築科に進学し、設計製図や構造の基礎を学びながら、「建築家としての感性」を育んできた。

新卒時には現場監督として住宅建築に携わり、職人との協働を通じて現場力・統率力を身につける。その後ログハウスメーカーで構造、施工、設計、営業と多岐にわたる経験を積む。営業時代には「お客様との対話」によって、商品や仕様のこだわりが伝わることの大切さを痛感。やがて起業を決意し、つくば住宅工房を設立。

家づくりにおいて何よりも重視するのは、「言葉にならない想い」をすくい取り、家という形に昇華させること。リフォーム・リノベーション・新築を問わず、常に「住み続けるほど好きになる家づくり」をミッションに掲げ、クオリティと誠実性を第一に提案を行っている。

  • 専門領域・関心分野
  • リノベーション/リフォーム
  • インスペクション
  • 耐震診断、温熱計算
  • 中古住宅の価値再生
  • 高性能住宅設計
  • 補助金制度活用・コスト最適化
  • 顧客との対話を重視した設計提案

メッセージ

「家は人生をゆたかに包み込む舞台である」という信念を胸に、家そのものを育て、住む人の想いを反映する住まいを共につくっていきたいと願っています。ブログでは、住宅の技術的知識から心の動きを捉える対話まで、幅広くお伝えしていきます。」

橋本 海知(はしもと かいち)

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